balancedとかabsorbingとかsymmetricとか
位相線形空間だとの近傍の基本系の中でもbalancedでabsorbingでsymmetricなものを選んでこれる。 わりと悩んだので書いておく。
symmetric
一番簡単だからこれから。 集合に対して
という集合を定義する。がベクトル空間の部分集合であれば、をと書いたりする。
もし、がこのと等しい、すなわちであるとき、をsymmetric setという。 なんか群みたい。 例としてはの部分集合とかの部分集合とか。
symmetricな集合の共通部分はsymmetricになる。 証明は簡単で、とすると、からで、更にからが言えるのでとなるからだ。
absorbing
これを解説するには、まず体に次の公理を満たす関数を入れたものを考える必要がある。
このような関数が入った体を付値体という。 体に距離が入った感じ。
さらに、体上の空間が
- は加法に関して位相可換群
- からへの写像が連続
を満たしている必要がある。この空間は左位相線形空間といったりする。
本題だけど、を付値体、を上の左位相線形空間として、とする。 となるが存在するとき、はをabsorbingするというのだけど、さらにがどんなの一点部分集合もabsorbingするとき、Aをabsorbing setという。 日本語だとabsorbingを併呑というらしい。(ブルバキ, 『数学原論 -位相線形空間-』, 1章1節5項, p.8)
absorbingな集合の共通部分はsymmetric同様absorbingとなる。 証明はsymmetricな場合と比べてちょっと複雑。 がabsorbingであることから
なんだけど、は書き換えると。 だから任意のに対して、となる。 書き換えると、。 証明終わり。
balanced
これもabsorbingと同じで付値体と左位相線形空間の概念を使う。
肝心の定義だけど、を付値体として、を上の左位相線形空間とする。 が任意のとなるにたいして、となるとき、すなわちとなるとき、をbalanced setという。 日本語だと均衡らしい。(ブルバキ, 『数学原論 -位相線形空間-』, 1章1節5項, p.7)
実はこいつもsymmetricやabsorbingと同じように共通部分はこの性質を継承する。 証明はいたって簡単。 まずとすると、に対してから。 同様にして。 証明終わり。
近傍の基本系
がの近傍の基本系であるとはの近傍全体の集合の中でも
をが満たすことをいう。
なんでこんなものを考えるかというと、一般に近傍ごとにいろんな形があるから、それら全てを扱うのは難しいのだけど、扱い易い性質をもったより小さい近傍がそれらの近傍のなかにあれば、その扱い易い近傍だけを考えればよいので近傍全体を取り扱いやすくなるからだ。
本題
以上から示したい命題は
の近傍の基本系の中には全てのが
- balanced
- absorbing
- symmetric
なものが存在する
まずbalancedから確認しよう。 のbalancedな部分集合の共通部分はbalancedだから、任意のについて、に含まれる最大のbalancedな集合がある(となってしまう可能性があるけど、ならとなることはない)。 の近傍はこのような集合を含むが、その集合自体もを含むため、の近傍となっている。 以上から、任意のの近傍はbalancedなの近傍を部分集合として持つことが確かめられた。
次にabsorbingを確認する。 実は任意のの近傍はabsorbingとなる。 実際、を初期点とした点列はとするとへ収束して、はこのような点列の一部を含む(absorbingの定義の一部をと書き換えればわかりやすいかも)。
最後にsymmetricとなるかを確認しようと思うが、実はこいつは前のabsorbinでbalancedなものを取れるという事実から簡単に示すことができる。の近傍をとしておくと、
- balancedからだけど、これはつまり
- absorbingから
2つあわせて。 証明終わり。